きょう10月30日は『字統』『字訓』『字通』の白川静先生の命日です。・・・日本語の素晴らしさ^L^

おはようございます^L^
きょうは『字統』『字訓』『字通』を執筆された白川静先生の命日です。

白川静先生のことについて詳しくはこちらのリンクをみてください:
https://akahiro.at.webry.info/theme/dd33038808.html
2013年10月30日のブログの画像には☰乾の卦画をイメージできる字があります^L^

書きたいことは沢山あるので支離滅裂で筆がすすみません><;
きのうまでに【易爺】がもっている甲骨文字や金文の本から必要な文字をお絵描きにあつめてイロイロ作業していたのですが、それで事おわれりという感じになって、気力がなぜか萎えてしまいます。・・・ことしは特にその傾向があります。【易爺】にしては忙しすぎるのでしょう・・・一番の問題はWN10と相性が合わないことです###

甲骨文字に遺された『易経』の八卦や大成卦の数列の卦画やそれに使われている数の問題、小生が調べた中では「九」が見当たらないこと・・・など色々調べたいことがあって時間が足りませんでした^L^

きょうは【易爺】がもっている『易経』普及版に書かれた、白川先生の「まえがき」をUPすることにしました:

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『字統』1994年初版 普及版まえがき
〔字統)普及版の刊行に当って

〔字統〕を刊行して、早くも十年を過ぎた。その間に、ひきつづいて〔字訓〕を刊行し、いままたようやく〔字通〕の稿を終えた。〔字統〕の執筆に当って予定していた三部の字書を、ともかくも完稿することができたのは、全く幸運であったというほかない。何ごとも、冥護の力によることであろう。

 〔字統〕は、字源の解明を試みた書である。字の初形初義を明らかにして、はじめてその展開義を考えることができる。組織的・体系的な文字学を確立するためには、まずその基礎となる字源の研究を確立しなければならない。幸いに今では、甲骨・金文の文字資料も豊富であり、方法的な処理を誤ることがなければ、彼らは十分にその生い立ちを語ってくれるはずである。私は三十年に近い間、その世界に沈潜した。そして〔甲骨金文学論叢〕十集、〔説文新義〕十六巻を書き、またその結果を、字書の形態で一般化するために、〔字統〕を書いた。幸いにこの書は、多くの読者に迎えられて版を重ね、その聞に、普及版を要望される声も多かったということである。

風の旧字 鳳.jpg
◆風を意味する「鳳」は下から三番目の字です。
右端・・東方を析と曰い、その風【=鳳】を【刕のしたにᏌ〔さい〕】と曰ふ。
二番目・南方を【夷?】と曰い、その風【=鳳】を長と曰ふ。
三番目・西方を【?】と曰い、その風【=鳳】を彝〔イ〕と曰ふ。
左端・・北方を【?】と曰い、その風【=鳳】を【役の彳ヘンが阝ヘン〔しゅ〕】と曰ふ。◆

 字源の学は、字源の学だけに終るものではない。原初の文字には、原初の観念が含まれている。神話的な思惟をも含めて、はじめて生まれた文字の形象は、古代的な思惟そのものである。たとえば風は、もと鳳の形に書かれ、鳥形の神であった。四方にそれぞれ方域を司る方神が居り、その方神の神意を承けて、これをその地域に風行し伝達するものが鳳、すなわち風神であった。風土・風俗のように一般的なものより、人の風貌・風気に至るまで、すべてはこの方神の使者たる風神のなすところであった。風の多義性は、風という字が成立した当時の、風のもつ古代的な観念に内包するものとして、そこから展開してくる。このことは、原初に成立した文字の多くについて、いうことができる。

 漢字の訓よみにして国語化するという方法は、漢字文化圏の中でも、わが国だけのものであり、これによって漢字の国字化も可能となり、さらに造語力の基礎が生まれた。「訓よみ」 は、漢字の国字化に道を開き、漢字に国語としてのはたらきを与える重要な方法であった。今の国字政策ではほとんど無視されている字訓の問題を、国語表記の原初に遡って、その実態と、その適応性・必要性を確かめるために、私は〔字訓〕を書いた。そこでは主として〔記〕〔紀〕〔万葉〕の用
字法を対象とした。

 「訓よみ」は平安朝以後、加点本が多く、鎌倉・室町期には多くの字書が作られた。鎌倉期書写の〔観智院本類聚名義抄〕によると、風には【カゼ・フク。カゼフク・ツタフ・ハナツ・ハルカナリ・ホノカ・オトヅル・スグル・ソヨメク・ノリ】など二十数訓が加えられている。このような訓義的な理解の上に、風の字を用いる連語(熟語)の意味、がすべて理解される。

 〔字通〕は、〔字統〕における字源の解明、〔字訓〕における国語としての訓義的理解の基礎の上に、連語としての語彙による漢字文化の全体を、歴史的に理解し、また形・声・義の関連を通じて、その全体を体系化することを試みようとした。もとより〔字通〕は、その試みの一部に過ぎないものであるが、国語が、漢字をその造語の方法、表現の手段としてもちつづける限り、国語の純化と発展のために、漢字文化の解明には、どのような努力をも惜しむべきでないと考える。

 歴史的なものには、すべて不易と流行の原理がはたらくものである。漢字の歴史は古く、漢字文化の及ぶ範囲は広汎を極めている。不易なるものを保ちながら、同時に時代の要請にこたえる方法を、考えなければならない。漢字に、新しい生命を与えなければならない。

 〔字統〕は、私の考えるこのような文字学のありかたの、出発点にあたるものである。このたび軽便な普及版が用意されることになったが、このような漢字についての基礎的な知識を共有することによって、漢字に新しい息吹きを与え、新しい時代に適応させてゆく方法を、考えることができるように思う。

 いわゆる国際化、開放化のはげしい動きの中で、国語の状況にも、いくらか懸念すべき徴候があらわれてきている。漢字は、過去の文化遺産の全体に連なり、文化の連続性を保証する最も重要な方法である。私の意図するところが、この書によって、より多くの人々に理解され、国字政策の全体が、その正しい文字知識の上に推進されてゆくことを、切にねがうのである。

   平成五年十二月      白川静

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因みに『観智院本類聚名義抄』にある「風」の訓義については、こちらの『字通』に書いてあります^L^

風 『字通』より.JPG

白川先生の「風」の字の解説をみて易の巽為風〔そんいふう〕の卦を想いでしますね。「象にいわく、君子は命を申〔かさ〕ね、事を行う」・・・申命は、旧約聖書の『申命記』に訳語しても散られています^L^

新訂 字統 - 白川 静
新訂 字統 - 白川 静
字訓 新装普及版 - 白川 静
字訓 新装普及版 - 白川 静
字通 普及版 - 白川 静
字通 普及版 - 白川 静

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