きょう6月21日は『父の日』・・ナイフに書かれた「父」の字が解りますか?

きょう6月21日は『夏至の日』です。
奇しくも朔・新月で旧暦の五月朔日で、台湾やインドでは皆既日食の日に当たります。
日本ではあいにく部分日食だそうです。

そうそう、忘れていましたが、今では枯れ落ち葉なみにあつかわれる影もないような儚い存在の『父の日』です^L^
そこで【易爺】が痛風の痛みに耐えながら父親の権威を以前のように状態に回復する方法はないかといろいろ考えを巡らしたのですが、これという名案は思い浮かびません><;

【画像】版権の関係で削除いたしましたm(_ _)m
『金文集1 殷周』書跡名品叢刊/二玄社刊の冒頭に掲載されている”三勾兵 三刀”の拓本です。


◆うえの図は いまから3000年以上まえの古代中国の殷〔いん〕の国の『三勾兵〔さんこうへい〕』というものです。
勾〔こう〕は勾玉〔まがたま〕の「まが」ですから「まがった」という意味で、この場合の兵は「ぶき=武器」という意味です。
三つの曲がった刀という意味でしょう。

 ナイフのような形をしていて取っ手の部分にはマムシやヘビを象った虺龍文〔きりゅうもん〕の装飾が施されています。この虺龍文はより抽象化・より形式化されている模様ですね。
 もちろん青銅で造られたもので実用に向きません。

 刃の部分には金文が書かれています。その金文は刃の切れる部分を上にして字を書いていますので、神事に使われたもの・禮器です。

◆どうです?この金文を読むことができますか?
 「父」の字はどれか解りますか?

【ヒント】「父」の字の初形は「斧【おの=フ】を又〔手〕で持っている」という会意文字です。
     ここに書かれている字は「父・兄・祖【=且】・大・日・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸・中」です。
   
・・・よく見ると、幼児がまちがって書く鏡文字の”左文”が上と下の”勾兵”にみえますね。

・・・答えは、明日の”易ごよみ”の最後に書いておきます^L^

・・・父の日、父の日。父の日・・・とウルサイ親爺だな###なんて^L^

★★★
 きのうの「三勾兵」の金文を今の字体に書き改めますと、

◆まず上の左は端から


祖 祖 祖 祖 祖 祖 祖
日 日 日 日 日 日 日
己 丁 乙 庚 丁 己 己

次は真ん中の刀の左から

・ 大 大 中
祖 父 父 父 父 父 父
日 日 日 日 日 日 日
乙 癸 癸 癸 癸 辛 己


最後の下にある刀の左から


兄 兄 兄 兄 兄 兄
日 日 日 日 日 日
乙 戊 壬 癸 癸 丙


これは、おそらく祖・父・兄の廟號【ビョウゴウ・ご先祖様をお祀りするときの呼び名】を記したものでしょう。
たとえば大祖日己〔だいそ・じつき〕と読むのでしょう。

意味は、己〔つちのと〕の日生まれの大祖、己〔つちのと〕の日に亡くなった大祖、あるいは 己〔つちのと〕の日に祭祀をする大祖、・・・などの意味が考えられます。
 また、大祖日乙を大祖を乙と曰〔い〕う、と読むこともできます。

 一般的な廟號は、日をはぶいて、大祖己とか父辛、大兄乙というのが多くみられます。


◆これが三千年以上前の大昔の漢字です^L^
 父の「斧〔フ〕+又〔手〕」の三つ歯のフォークのような又〔手〕で持った斧・鉞の断面図の形がいいですね^L^
 この斧・鉞こそが父親の権威の象徴です!!! ナンテなぜか空しく響きますね(笑)

 大祖、大父・大兄の大は「大きな人の立ち姿の正面形」です。
 兄は「Ꮜ〔さい〕+人の側面形」で、神様に祝詞などを容れる器を捧げている姿です。神事に奉職する人をしめす字です。
 祖の且は「俎ソ・牲〔いけにえ〕を載せる台」で、「宜〔ギ〕は俎上に神様にお供えする大きな肉の断片を置いた形」です。その俎から意味が変化して祖先・祖父母・祖〔おや〕の「祖」になったのです。

鏡文字の左文は、
上のナイフの左から三番目の「乙〔きのと〕」と右端の「己〔つちのと〕」二つ、
下のナイフの左端の乙〔きのと〕、そのとなりの戊〔つちのえ〕も左文ですね。

◆さて、順序をあらわす字として十干〔じっかん〕の字はすべて象形文字であるというのが【易爺】の考えです。【易爺】は易をやりますので『説文解字』の説は占考では用いますが、白川静先生の説を信じています^L^

十干〔じっかん〕とは甲乙丙丁戊己庚辛壬癸〔こう・おつ・へい・てい・ぼ・き・こう・しん・じん・き・・手抜きでしょう(笑)〕ですが、すべて器物をかたどった象形文字です^L^
さらに甲〔きのえ〕と乙〔きのと〕・・・木の兄〔え〕と木の弟〔と〕つまり木行の陽〔⚊〕と木行の陰〔⚋〕と二字ずつのペアのなっています。

・甲は亀の甲つまり亀卜〔きぼく〕につかう亀の甲羅を形どったのが「甲〔こう・きのえ〕」です。
・乙はこれも卜占に獣の骨・獣骨を形どったのは「乙〔おつ・きのと〕」です。

・丙〔へい・ひのえ=火の兄 陽の火〕は下のナイフの右端の下にあります。
 これは台座です、何か物を上に載せて作業をする頑丈な台座の象形文字です。
・丁〔てい・ひのと=火の弟 陰の火〕は、上のナイフの左から二番目と五番目の字です(笑)
 これは釘を打ち付けた跡の頭部・・・釘の頭の部分の象形文字です。

・戊〔ぼ・つちのえ=土の兄 陽の土〕は、下のナイフの左から二番目、そりのある刃がついた器具の象形文字、
・己〔き・つちのと=土の弟 陰の土〕は、ことらは屈曲して器具の象形文字、
 戊己ともに工作のための器具で、戊は曲。己は方【直角・四角】に関する器具でしょう。

・庚〔こう・かのえ金の兄 陽金〕は、上のナイフの左から4番目、両手【左右にある又=手=三つ歯のフォーク】で杵【きね】を持っている象形文字です。杵を上下に動かして穀類を搗くための道具です。
・辛〔しん・かのと金の弟 陰金〕は、真ん中のナイフの右から2番目、これは針です。縫い針とか治療のための針です。
 庚・辛に両手で持つ、片手でもつ、上下動と一方向の動きなどの違いがあります。

・壬〔じん・みずのえ=水の兄 陽水〕は、下のナイフの左から三番目、レールの断面図のような形ですが、上の方が長くなっています。これも台座のようです。金属を鍛冶する工具の象形文字です。
・癸〔き・みずのと=水の弟 陰水〕は、下のナイフの左から四、五番目、これは上の「壬」の台を支える足・柎足です。高層建築で使うクレーンの台座のようなものです。

・・・このように二つでペアになっている感じの工具・器具の象形文字のようです^L^
・・・この同じ五行を陰陽でペアにした十干〔じっかん〕の説は白川静先生の説です^L^
・・・ほかにも、藤堂明保先生の説などイロイロ面白い説があります。

・・・【易爺】も占いを始めた当初は五行の勉強は相当しました。【易爺】はこれでも原典に遡って調べていますので、そんじょそこらの占い師には負けませんよ(笑)・・・ただし、今では周易mp占いで五行説で観ることはほとんどありません。易爺が今年になって五行を使ったのは、時期をみるのに爻辰の冲や合をみるときだけです。これは断易【五行易】の手法を周易に取り入れた大岳易の手法でもありますがその時だけです^L^

参考文献:
『字統』著/白川静(平凡社)
『金文集1 殷周』書跡名品叢刊/二玄社刊

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